迫りくる物価上昇 修繕費はどこまで値上りするの?

31カ月連続でCPI(消費者物価指数)が2%超え

2013年に日本銀行が大規模金融緩和政策に舵を切ってから約10年経過し、ようやく目標であった物価2%を上回るようになりました。

物価が上昇した理由は、残念ながら日本銀行による金融緩和政策のためではありませでした。
とはいえ、長年の目標であるデフレ脱却にようやく成功したのです。

ただ、目標達成は嬉しいはずなのですが、一般家計にとってその影響はやや深刻です。
今年になって、お米の値段が倍以上になったり、当然公共料金、食品等は軒並み値上がりしていることから物価による家計へのダメージを実感されていることでしょう。

この物価の波は、住宅業界にも押し寄せてきています。

消費者物価指数と、国土交通省の不動産指数をと比較してみます。

出所:国土交通省、統計局のデータをもとにホームローンドクターが独自に計算

2019年8月を100とした時に、2024年8月でCPI(消費者物価指数)は109.1ですが住宅地は117.5、戸建て住宅は114.0、マンションは141となっています。
住宅関係の費用は、すべてCPIを上回る伸びとなっているのです。

今後も物価上昇は続くのか?

将来のことを確実に予想することはできません。
ただ、専門家がどのように予測しているのかを知れば将来のことを知る手掛かりが得られると考えます。
将来の物価動向を知るため、以下の3つの見通しを見てください。

日本銀行

日本銀行は、4半期ごとに「経済・物価情勢の展望」というレポートで先行きの経済や物価の見通しを発表しています。
先行きといっても、主に2年後までのものですが、2024年7月時点での日本銀行の政策委員の見通しは以下の通りです。

  実質GDP 消費者物価指数
除く生鮮食品
2024年度 +0.5~0.7% +2.5~2.6%
2025年度 +0.9~1.1% +2.0~2.3%
2026年度 +0.8~1.0% +1.8~2.0%

出所:日本銀行「経済・物価情勢の展望」2024年10月

レポートでは、2026年度までは物価は概ね2%で推移するとしています。
当面、目標である2%の予想は達成されるとの見通しのようです。

ニッセイ基礎研究所

長期の見通しを発表している経済研究所で、筆者はいつもお世話になっています。

2023年10月の中期経済見通し(2023~2033年度)において、
CPIは、以下のような予想となっていました。

2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030 2031 2032 2033
2.8% 1.6% 1.4% 1.7% 1.8% 1.7% 1.6% 1.6% 1.5% 1.5% 1.5%

総じて、1.5%以上となっていますが、日銀の目標である2%の実現はできないと見ているようです。

BEI(ブレークイーブンインフレ率)

市場が予想している物価上昇率で、日銀も金融政策の判断材料としていると言われています。
固定利付債と物価連動国債の利回り格差を予想インフレ率として計算します。
およそ10年間の長期の物価上昇率だとみなせばよいでしょう。

出所:財務書HP

2024年11月現在で、1.368%ということで、ニッセイ基礎研究所よりもやや低いようです。

3者、いずれの見方にしても、将来の物価上昇率は1%を上回る可能性が高そうです。

物価上昇による影響は?!

修繕費用は、物件の構造、設備の書類、それだけでなく、利用状況等により費用は異なってきます。

前掲のグラフから、住宅関係のコストは、CPIを上回る伸びだったとわかりました。
ただ、今後も同じように上昇するかはわかりませんが、おおよそ上昇傾向となりそうです。

そこで、修繕費用が物価上昇率を以下のように設定し、どのように変化するのかを確認してみたいと思います。
この上昇率は、予測ではありません。
上昇率の違いにより費用の変化を見極めることが大事なのです。
現在の修繕費用を100とし、経過期間ごとに計算しました。

当初 物価上昇率 5年目 10年目 15年目 20年目 25年目 30年目 35年目
100 1% 106.2 110.5 116.1 122.0 128.2 134.8 141.7
100 2% 112.6 121.9 134.6 148.6 164.1 181.1 200.0

多くの見通しが、将来の物価上昇を1%以上と見ているようなので物価が1%と2%上昇した場合を試算しています。

日銀の掲げる物価2%が実現されるなら、影響はきわめて大きいようです。
というのも、35年後にはコストが倍になってしまうからです。
このペースで増えるなら、超低金利の預貯金だけで準備するのは難しそうです。

では戸建て住宅とマンションの長期修繕計画をもとに、修繕費用がどうなるかを試算してみたいと思います。

物件種類別の長期修繕計画への影響

まずは戸建ての長期修繕計画を見てみましょう。
当初見積もりの欄にあるのが、長期修繕計画で、
これをベースに、物価上昇が1%、2%の場合を試算しました。
単位は万円です。

  5年目 10年目 15年目 20年目 25年目 30年目 35年目 合計
当初見積もり 15 15 340 115 15 410 20 930
値上がり1% 16 17 395 140 19 553 28 1,168
値上がり2% 17 18 458 171 25 743 40 1,471

修繕の時期が、値上がりに大きく影響することがおわかりいただけるだろう。
1%上昇で合計230万円以上、2%上昇で540万円以上と非常に大きいものになります。

次に、マンションの専有部分のみの修繕計画を見てみましょう。
当初見積もりをベースに、物価上昇をさせてみました。
同じく単位は万円です。

  10年目 20年目 30年目 合計
当初見積もり 0 300 200 500
値上がり1% 0 366 270 636
値上がり2% 0 446 362 808

戸建てよりは、修繕費用が少ないですが、やはり物価上昇によるインパクトは見過ごせません。
1%上昇で130万円以上、2%上昇で300万円以上です。

「物価上昇おそるべし」と思っていただけましたでしょうか。
日銀が2%の目標を掲げた2013年は、誰も反対しませんでしたが、これがわかっていたなら、反対する人はきっといたと思われます。

物価上昇へ備えるためには

物価上昇に備えるため、いくつかできることがあります。
最も簡単かつ効果的なのは、賃金が物価並みに上昇することです。

賃金上昇は、多くの問題を解決するので、是非、経営者の皆様は、物価並みに賃金をあげていただきたいとお願いしたいところです。

万が一、物価並みに賃金が上がらないのであれば、自分で対策をたてなくてはなりません。
その対策として考えられるのは、ずばり収支の改善です。

①収入を増やす

収入を増やすのは簡単ではないかもしれません。
出世する、手当をもらう、成果を上げる、転職する、副業を始めるなど、様々な方法が考えられます。
また、配偶者が働いていなければ、配偶者が働くのもありです。
もしかすると子供が就職して、世帯収入が増えるかもしれません。
それぞれの家庭で現実的な方法をご検討ください。

他の方法で有力な手段は、不労所得を作ることです。
不動産投資、資産運用などを行うことで、自分が働かなくても収入が増えるようにします。
売電収入もその一つといえるでしょう。
これも簡単ではないかもしれません。

②支出を減らす

直接的には、修繕費用を引き下げる努力をすることです。
例えば、事前にできることはメンテナンスコストが安くなる選択をするのが有効です、そうすると初期費用が高くなりがちですが、初期費用とメンテナンスコストのトータルコストが安くなるか、それを確認することが重要です。

設備等であれば、高品質のものを選ぶことで修繕の費用負担を下げられる場合があります。
また、修繕の頻度が少なくなり、トータルでコストを下げられることもあるでしょう。
壊れきってしまう前に、予防的に買い替え等を行うことで、コストを抑えることもできるかもしれません。

次に、日常の生活費等を削減することで、余裕資金を作ることが考えられます。
節約するということも大事ですし、光熱費がかかりにくい家にすることで、余裕資金が無理なく捻出できたりします。
この余裕資金は、資産運用に回せば、より効率的に資金を準備できるかもしれません。

独自に修繕費用を準備しましょう

修繕のための費用は預金で貯めます!」と言われる方は少なくありません。
とてもよいことなので否定はしませんが、問題が2つあります。

1 預貯金は何にでもつかえるので、他の支出が優先されやすい
2 物価上昇の値上がりに対抗できない

子どもの大学費用の支払いと、修繕のタイミングが重なったらどちらを選びますか?
おそらく大学費用を優先すると思いますが、翌年に修繕すると、残念ながら値上がりしている、
そんなことも起こってもおかしくありません。
修繕費用をすぐにはらえるよう資金の準備をしておきましょう。

修繕のため、資産運用を頑張ります!」と言われる方が最近増えてきたように感じます。
これもとてもよいことなので否定はしませんが、問題が2つあります。

1 運用がマイナスの時に解約できない可能性がある
2 運用が失敗すると、物価の値上がりに対抗できないことがある

運用に絶対はありません。
もちろん失敗しないように、万全をつくされるとは思いますが、たまたま修繕費用の支払い時期に、運用がマイナスになったとして、それを解約する勇気がもてるでしょうか。
もちろん支払いがあるので解約するのでしょうが、おそらく損切りの決断は、簡単ではないでしょう。

また、運用に失敗してしまうと、修繕費用の支払いそのものに影響がでてしまうかもしれません。
修繕費用のための運用も、すべてオルカン一択というのは絶対にやめていただきたいです。
オルカンとは全世界株式オールカントリーという投資信託のことです。
世界の株式に分散投資しているので、安全だと思っているようですが、株式投資のみの投資信託なので、十分に分散されているとはいえません。
支払い時期を考慮しながら、リスクを分散して値動きを平準化しておくことを検討してほしいものです。
場合によっては、支払い時期が近付いたら株のみの投資ではなく、債券中心や現預金に振り替えた方がよいかもしれません。

修繕費用のために作られた修繕保証プラスは、安全性を確保しつつ、物価上昇負担を軽減する仕組みを取り入れています。
詳しくは、修繕保証プラスの概要をご確認いただき、将来の修繕費用の準備の手段の一つとして、ご検討ください。