マンションにお住まいの方にとって、「専有部分」と「共用部分」の違いを理解することは、ご自身の資産を守り、快適な暮らしを続ける上で非常に重要です。専有部分とは、文字通りあなたが単独で所有し、居住空間として利用している住戸内部のことです。具体的には、室内の壁紙、床材、キッチンや浴室、トイレといった設備、給湯器、インターホン、そして専有部分内を通る給排水管などがこれにあたります。
一方、共用部分とは、マンションにお住まいの方々全員で共有している部分で、建物の構造体、外壁、屋上、廊下、階段、エントランス、エレベーター、共用部分の給排水管、消防設備、駐車場などが含まれます。
目次
専有部分の修繕について
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 修繕の必要性 | 1. 快適性の維持: 古い設備の使い勝手悪化や故障を防ぐ。 2. 機能の維持: 給湯器故障や水漏れなど生活への支障を防ぐ。 3. 資産価値の維持・向上: 売却・賃貸時に評価を高める。 4. 共用部分への影響防止: 専有部分の不具合が他に波及するのを防ぐ。 |
| 修繕時期の目安 | ・水回り設備 (キッチン、浴室、トイレ、給湯器): 15年?20年程度 ・内装材 (壁紙、床材): 10年?15年程度 ・専有部分内給排水管: 素材や共用部の計画によるが、個別の対応が必要な場合も。 |
| 計画的な備え方 | 1. 定期的なセルフチェック: 住戸の状態(水回り、壁、床、設備動作など)を日常的に確認。 2. 設備の築年数確認: 主要設備の設置時期を把握し、交換時期を予測。 3. 優先順位付け: 緊急性の高いものから計画的に修繕。 4. 専門業者への相談: 劣化診断や見積もりを依頼。 |
| 修繕費用の準備 | 1. 毎月の積み立て: 将来の費用を見積もり、計画的に貯蓄(専用口座推奨)。 2. サービスの検討: 「修繕保証プラス」のような、費用負担を軽減するサービスの利用も選択肢。 3. 共用部分一時金への備え: 共用部の積立金不足による一時徴収の可能性も考慮。 |
マンションの共用部分の維持管理・修繕は、区分所有者全員で構成されるマンション管理組合の責任で行われますが、ご自身の住戸である専有部分の維持管理と修繕は、原則としてあなた自身(区分所有者)が行い、その費用も自己負担となります。
なぜ専有部分の修繕が必要なのか?
「まだ使えるから大丈夫」と思っていても、専有部分の設備や内装は時間とともに必ず劣化していきます。適切な時期に修繕や交換を行わないと、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 快適性の低下: 古くなった設備は使い勝手が悪くなったり、故障しやすくなったりします。壁紙の汚れや剥がれ、床材の傷みは、住まい全体の印象を損ない、日々の生活の快適性を低下させます。
- 機能の維持: 給湯器が壊れてお湯が出なくなる、キッチンの水栓から水漏れするなど、設備の故障は生活に大きな支障をきたします。水回り設備の内部配管の劣化は、漏水事故に繋がるリスクもあります。
- 資産価値の維持・向上: 将来、マンションを売却したり、賃貸に出したりする場合、専有部分の状態は買い手や借り手の重要な判断材料となります。綺麗に手入れされ、設備が適切に更新されている住戸は、そうでない住戸に比べて高い評価を得やすく、資産価値の維持・向上に繋がります。逆に、手入れを怠ると資産価値が著しく低下する可能性があります。
- 共用部分との関連: 専有部分の給排水管の劣化などが、共用部分の配管や他の住戸に影響を与えるケースも考えられます。ご自身の専有部分の異常を早期に発見し対応することは、マンション全体のトラブル防止にも繋がります。

専有部分の修繕時期の目安
マンションの専有部分(住戸内)における主な設備や内装の交換・リフォームに関する費用目安を表にまとめます。
これらの費用は、共用部分の修繕積立金とは別に、各区分所有者が個別に計画し、負担するものとなります。
マンション専有部分の修繕・リフォーム費用目安
| 箇所(設備・内装) | 交換・リフォーム時期の目安 | 費用目安(製品グレード・工事範囲による) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 水回り設備 | |||
| キッチン | 15~25年 | 50万円 ~ 150万円以上 | システムキッチンのグレード(素材、機能)、サイズ、食洗機等のオプション、周辺の壁・床工事の有無で大きく変動します。 |
| 浴室(ユニットバス) | 15~25年 | 60万円 ~ 150万円以上 | ユニットバスのグレード、サイズ、浴室乾燥機等のオプション、解体・撤去・設置工事費を含みます。在来工法からの変更はさらに高額になる場合があります。 |
| トイレ | 15~20年 | 15万円 ~ 50万円以上 | 便器本体のグレード(タンク式/タンクレス、温水洗浄機能、節水性能)、手洗い器の有無、内装(壁・床)工事の有無で変動します。 |
| 洗面化粧台 | 15~20年 | 15万円 ~ 50万円以上 | 化粧台本体のグレード、サイズ(幅)、収納タイプ、三面鏡などの機能、設置工事費。 |
| 給湯器 | 10~15年 | 15万円 ~ 40万円以上 | 号数(給湯能力)、機能(追い焚き、エコジョーズ等)、設置場所(PS内/壁掛け)、リモコンの種類、工事費。故障前の交換がおすすめです。 |
| 内装 | |||
| 壁紙(クロス) | 10~15年 | 1㎡あたり 1,000円 ~ 2,000円程度 <br> (6畳間で 4万円 ~ 8万円程度) | 部屋の広さ、選択するクロスのグレード(量産品/高機能品)、下地処理の必要性、家具移動の有無などで変動します。 |
| 床材(フローリング等) | 15~20年 | 1㎡あたり 4,000円 ~ 15,000円以上 <br> (6畳間で 8万円 ~ 20万円以上) | 材料費(複合フローリング/無垢材/クッションフロア/カーペット等)と工法(重ね張り/張り替え)で大きく変動。マンション規約で遮音等級の規定がある場合が多いです。 |
| 畳 | 5~10年(表替え)<br>10~15年(新調) | 表替え:1畳 5千円~<br> 新調:1畳 1万円~ | 畳の種類(い草/和紙/樹脂)、縁(へり)の有無などで変動します。 |
| その他 | |||
| 建具(室内ドア等) | 20年~ | 1箇所 5万円 ~ 15万円以上 | ドア本体のデザイン・材質、ドア枠交換の有無、レバーハンドル等の金物、既存撤去・設置工事費。 |
| 給排水管(専有部) | 30年~ | (個別見積もり) | 材質や劣化状況によります。水回りリフォーム時に同時に点検・交換を検討するのが効率的です。共用部の配管更新と合わせて実施されることもあります。 |
| 窓・サッシ | (基本は共用部分) | (個別見積もり) | 断熱・防音目的の内窓設置は比較的手軽(1箇所 5万円~)。サッシ自体の交換は共用部分扱いが多く、管理組合の許可が必要です。 |
| エアコン | 10~15年 | 5万円 ~ 20万円以上 / 台 | 能力(対応畳数)、省エネ性能、機能(自動掃除等)、設置工事費。 |
「マンション専有部分の修繕・リフォーム費用目安」の表は、主にリフォーム会社のウェブサイトや専門情報サイトで公開されている価格帯、住宅設備メーカーの製品カタログに記載の参考価格、壁紙や床材といった建材・内装材の一般的な市場価格、そして関連する設置・解体工事費などの一般的な傾向を総合的に勘案して作成しています。
選択する製品のグレード(普及品か高級品かなど)や工事の範囲(部分的な交換か広範囲か)によって費用は大きく変動するため、表に記載の金額はあくまでも一般的な目安として幅を持たせています。正確な費用を把握するためには、必ずご自身の希望を伝え、複数のリフォーム会社から見積もりを取得して比較検討することが重要です。
【表に関する注意点】
- 費用はあくまで目安: 上記は一般的な工事費込みの概算であり、製品の選択、工事内容、業者、地域、時期によって費用は大きく異なります。複数の業者から見積もりを取ることをお勧めします。
- 自己負担が原則: これらの専有部分の修繕・リフォーム費用は、区分所有者個人の負担となります。
- 資金計画: 計画的に資金を準備しておくことが大切です。自己資金のほか、リフォームローンの利用も検討できます。
- 管理規約の確認: リフォームを行う際は、必ずマンションの管理規約を確認してください。使用できる床材の遮音等級、工事可能な時間帯、申請手続きなどが定められている場合があります。特に水回りや構造に関わる工事は事前の届け出や承認が必要です。
専有部分のメンテナンスやリフォームは、ご自身の暮らしの快適性を高めるだけでなく、将来的な売却や賃貸の際にも影響します。計画的に検討を進めましょう。
専有部分の修繕時期は、使用頻度やお手入れの状況によって異なりますが、一般的な目安を知っておくと計画を立てやすくなります。
- 水回り設備(キッチン、浴室、トイレ、給湯器): 15年〜20年程度で交換が検討されることが多いです。特に給湯器は耐用年数が比較的短い場合があります。
- 内装材(壁紙、床材): 10年〜15年程度が張り替えや交換の目安です。汚れや傷みが目立ってきたら検討しましょう。
- 専有部分内の給排水管: 素材や施工方法によりますが、共用部分の配管更新計画に合わせて検討されることが多いです。しかし、早期の劣化や仕様によっては個別の対応が必要になる場合もあります。
これらの目安を参考に、ご自身の住戸の築年数や前回のリフォーム時期を確認し、おおよその修繕時期を把握しておくことが大切です。
あなたの住戸の現状把握と計画的な備え
専有部分の修繕はあなた自身の責任で行うため、計画的に進めることが重要です。
- 定期的なセルフチェック: 日頃からご自身の住戸の状態に気を配りましょう。水回りの異音や臭い、壁や天井のシミ、床のきしみ、窓周りの結露などを定期的にチェックします。給湯器やインターホンなどの設備についても、正常に動作するか確認しましょう。少しでも気になる箇所があれば、メモしておくと良いでしょう。
- 設備の築年数確認: キッチン、浴室、トイレ、給湯器、エアコンなどの主要設備の購入時期や設置時期を把握しておきましょう。取扱説明書や保証書を確認したり、購入した業者に問い合わせたりすることで分かります。一般的な耐用年数を参考に、おおよその交換時期を予測できます。
- 優先順位付け: セルフチェックで気になる箇所が見つかったり、設備の寿命が近づいてきたりしたら、修繕の優先順位を検討します。水漏れなど生活に直結する緊急性の高いものは最優先で対応が必要です。そうでないものも、予算や他の設備の状況を踏まえて計画的に進めることが、費用を抑え、快適性を維持するために有効です。例えば、退去時に合わせて内装を全面的にリフォームするといった計画も考えられます。
- 専門業者への相談: 心配な箇所があったり、将来的なリフォームを検討したりする際は、専門のリフォーム業者に相談することをおすすめします。建物の専門家として、劣化状況を正確に診断し、適切な修繕方法や概算費用についてアドバイスをもらえます。複数の業者から見積もりを取り、比較検討することも重要です。
- 修繕前に確認が必要な箇所:専有部または専有部のように思える箇所も、実は専有部でなかったり、専有部であっても管理組合に確認をしなければならない箇所があったりします。ベランダや玄関のドアの外側は共有部となっていることが多く、また、水回りや構造にかかわる部分は事前に許可が必要なことがあります。
専有部分の修繕費用の準備
専有部分の修繕費用は、キッチン交換で50万円~150万円程度など、内容によってまとまった金額が必要になります。これらの費用に備えるためには、計画的な資金準備が不可欠です。
- 毎月の積み立て: 将来必要になる修繕費用を見積もり、毎月の家計から一定額を積み立てていく方法です。修繕専用の口座を開設し、他の生活費と分けて管理するとより効果的です。
- 「修繕保証プラス」などのサービスの検討: ご自身の専有部分の予期せぬ故障や将来のリフォーム費用に備える手段として、「修繕保証プラス」のようなサービスも検討できます。こうしたサービスは、事前に費用を準備しておくことで、特定の工事費用に対する保証を受けたり、費用負担を軽減したりできる可能性があります。特に、近年は物価高の影響で修繕費が値上がりする傾向にあるため、現金を積み立てるだけでなく、このようなサービスを活用して賢く準備することが求められています。
- 共用部分の一時金への備え: 後述する共用部分の修繕積立金が不足した場合、管理組合から一時金(追加徴収金)が徴収される可能性があります。これは個人の家計に大きな負担となるため、専有部分の修繕費用だけでなく、共用部分の一時金が発生する可能性も考慮に入れた個人としての資金計画も重要です。
まとめ
マンションの専有部分の修繕は、あなたのプライベートな空間と資産を守るための重要な責任です。設備や内装の劣化は避けられませんが、定期的なセルフチェックで現状を把握し、将来的な修繕時期や必要な費用を見越して計画的に準備することで、予期せぬ大きな出費を防ぎ、いつまでも快適で価値のある住まいを維持することができます。ご自身の住戸の状態に関心を持ち、計画的に備えることが、安心して暮らし続けるための第一歩です。

